この記事は1998年6月のものです。現在の内容と異なる場合がありますのでご了承ください。

とらばーゆ人

“基本に忠実”を実践する元教習所先生

西村利之丞さん(中川営業基地)

 

 

 名タクに入社して3年半。とにかく「車を運転するのが好き」なのが、中川基地の西村利之丞さん(51)です。「車を走らせれば、いろいろな風景に出会えますし、どこへでも自由に行けますからね」。

 プライベートのドライブでも丁寧な運転を心掛けているそうですが、乗務の際はとくに「急発進や急ブレーキで、お客さまに恐怖心を与えないように」が最大のモットー。プロのドライバーは基本に忠実なのです。

 それというのも西村さんの前職は、東京で芸能人専門の自動車教習所「丞ドライビング・スクール」を経営していた運転の先生。ちなみに”利之丞”という名前は芸名のようですが、幸運を招くという占いに従ってつけられた本名です。

 「最初は一般のビジネスマンが主なお客さまだったんですが、最初に歌手の高橋真梨子さんがみえて、他の芸能人の人に紹介してくれたようなんですね。それがロコミで広がって、ついには芸能人専門のようになってしまったんです」。

 以来、大信田礼子さん、狩人をはじめ、当時、全盛だった若い芸能人が次々に来所。教えた生徒さんは、三百五十人ほどにもなりました。引退した歌手の山口百恵さんからも、プロダクションを通してレッスンの打診があったそうですが、その頃はちょうど実家の跡を継ぐため、教習所を閉鎖する決意をしており、お断りしたエピソードもあるようです。 でもこんなに芸能界に人気を得た秘密は何だったんでしょうか。「多分、スター扱いをしなかったからだと思います。女優さんでも教習所に来る時はスッピン。ここなら普通の女性でいられるという安心感が、良かったのでしょうね」。

 指導方法もなかなか厳しくて、どんな状況でも運転できるように、仮免許を取得するとすぐに伊豆半島を一周したり、銀座を走ったり。

 そんな西村さんの目から見ると、最近のドライバーはちょつと運転が乱暴のよう。「右左折の指示を出さない人や、赤信号を突っ走る人が増えましたし、全体にスピードも出ていますね」。

 車が好きだからこそ、基本を守って安全運転をしたいという西村さん。交通事故のないドライブを願う気持ちも、人一倍のようでした。