この記事は1998年12月のものです。現在の内容と異なる場合がありますのでご了承ください。

バックミラー

歌も仕事もポイントはハーモニー

羽賀 数徳(西部営業基地)

 

 仲間4人でバンド活動を楽しんでいる。といっても楽器演奏とは違う。声だけでメロディーやリズムを刻む、通称アカペラ・バンド

 学生時代は時流に乗って、フォークやロックに夢中だったから、ギターやドラムは必須だった。ところが卒業後、またやろうと当時の仲間が集ったときだ。ありきたりじゃつまらない。演奏なし、歌だけで、ということになった。もっとも本場アメリカにはこの手のプロは数多い。当然、彼らの歌う「ラストダンスは私に」とか「スタンド・バイ・ミー」がレパートリーとなる。

 結成して、もう13年になる。地元のテレビ番組に出演したこともある。とりわけ印象に残っているのは5年前の出来事だ。結構熱心にライブハウスで活動していたからだろう。その噂を聞きつけて、あるコーラスバンドが一緒にステージに立たないかと、電話をくれたのだ。コーラスの名前は「ザ・キングトーンズ」。大阪のコンサートホールで、観客は1500人の大舞台。二つ返事で快諾した。

 日本の代表的アカペラ・バンドとの「共演」は夢心地だったが、感じ入るところも多かった。あの一糸乱れぬハーモニーが今でも耳から離れない。

 以来、ハーモニーについて思いを巡らすことがある。つまり「調和」とは、相手の気持ちを理解しなければ生み出せないということだ。自分中心は戒めなければならない。

 これは音楽だけの話ではないと思う。仕事もそうじゃないだろうか。あるときコンサート帰りのお客さまを乗せてハンドルを握った。話題は自然、演奏グループのこととなり、大いに盛り上がった。これも気持ちのいいハーモニーなのだ。アメリカの方をお乗せしたとき、来日して間もないのか、落ち着かなげに後席の窓越しから外を見回している。気持ちをほぐしてもらいたくて、アメリカン・ポップスの話をした。すると途端に目を輝かせて口ずさみ始め、到着する頃には車内がライブハウスのようになってしまった。

 お客さま相手にハーモニーの輪を広げられるのも、バンド活動のおかげなのだと思う。いや、ひょっとしたら逆なのかもしれない。最近、仲間との練習中、鳥肌が立つほど、ハーモニーが噛み合うときがある。その呼吸を会得させてくれたのは、タクシーのお客さまかもしれないからだ。