ジャンボ一日ドライブ

この記事は1998年12月のものです。現在の内容と異なる場合がありますのでご了承ください。

大正ロマンをなつかしみ、

やさしい土地柄にふれる

　明智町は戦国武将・明智光秀の出生地。というより今では「日本大正村」の方が名が通っています。名古屋からなら中央自動車道・恵那インターを経由して、という手もありますけれど、今回は瀬戸市を抜けて国道３６３号線をドライブ。それでもわずか１時間半。冬の陽のガラスのようなきらめきが、山の端を青空にくっきりと浮き立たせ、ドライブ気分を大いに盛り上げてくれます。

　さて、大正村。村といっても、しかるべき建物を一堂に集めたテーマパークではありません。大正時代のたたずまいが多く残っている明智町が、町をあげて、当時のロマンと文化と生活の香りを伝えようと、周辺一帯にその名を冠した次第。

　大正村役場を起点に町を歩くと、あの頃の郵便局、レストラン、医院、銀行、路地などに行き当たり、何かなつかしい気分がにじみ出してきます。住んでいる人たちの人柄でしょうか。もとカフェの天久資料館始め、どの施設を覗いても、気さくなおばちゃんたちが、自宅に招き入れるように迎えてくれます。大正村資料館ではヘルシーな「しいたけ茶」も無料サービス。木製の古いベンチでお茶をいただきながら、昔話に相づちを打っていると時間の経つのを忘れてしまうほど。

大正ロマン館

粋な往時をしのばせる

路地かいわい

　この大正村の初代村長が女優の故・高峰三枝子さん。村会議長が元横綱栃錦の故・春日野親方。そして２代目村長には今年の秋、司葉子さんが就任しました。平成５年にオープンした大正ロマン館には初代の二人の遺品展示室もあり、多くのファンが訪れていました。

　施設も味わいがあるけれど、それ以上に印象深かったのが路地のたたずまい。明智は昔、中馬街道（塩の道）の宿場でにぎわい、路地のあちこちには旅人相手の料理屋が並んでいたとか。で、通り名が「うかれ横丁」。馴染みの芸妓さんも多かったのでしょう。すぐ脇には「しのぶ恋路」という粋な小道も抜けています。

大正村役場

カンテン料理に戦国料理、

岩村周辺うまいもの巡り

　大正村から再び３６３号線を前進、戦国時代の女城主で名高い岩村へ。途中の山岡町では、国道沿いの「カンテン村パーク」に立ち寄りました。ここでは特産のカンテン料理が大収穫。ところ天もおいしいけれど、ここは一つユニークなカンテンラーメンをぜひ。やさしい食感と喉越しが格別で、おやつ代わりに楽しめます。

　その山岡町からほんの１５分ほどで岩村に到着。奈良県の高取城、岡山県の備中松山城と並ぶ山城の城下町。ナマコ壁の連なる通りには、職人や商人の店が並び、往時の面影を十分に辿ることができます。標高７２１メートルの山頂にある城址へは石畳の続く登城坂を。
その入り口には歴史資料館や藩校・知新館が建ち、多くの観光客を集めています。

　食事に立ち寄った岩村山荘も城址のふもと。

　外観は二の丸風の風格を漂わせ、窓からは御岳も望める立地がすばらしい。いただいたのは山荘名物「戦国料理」。飛騨牛、地鶏、アユ、それに季節の野菜を炭火で焼いて、ほう葉味噌と一緒に豪快に。味噌の香りとともにビールをゴクリ。囲炉裏端で車座になって、仲間とワイワイやれるのもジャンボタクシーのメリットですね。

　岩村山荘は料理とともに温泉も名物。「老いずの湯」と名付けられたラジウムの湯槽には午後の冬日が差し込み、ゆったりと体を浸してくつろげます。うまい食事と熱いお風呂。若返りにはこれが一番。来年の福を呼び寄せたような満足ドライブでした。