この記事は1998年12月のものです。現在の内容と異なる場合がありますのでご了承ください。

NTERIVIEW 私のタクシー体験

 

中日ドラゴンズ選手

山崎武司さん

聞き手

名鉄交通会長 村手光彦

やまさき・たけし

1968(昭和43)年11月7日生まれ、愛知県知多市出身。愛工大名電高を卒業、87年ドラゴンズ入団。96年に本塁打王を受賞。今季は本塁打3位。寿代夫人、長男大貴君とともに東海市に在住。

野球選手何人かで乗れば、海外のタクシーも怖くないと。(笑い)

 中日ドラゴンズで投打ともに活躍する期待の内野手・山崎武司選手。今季のペナントレースの個人タイトルでは、本塁打3位に終わったが、セ・リーグのオールスター東西対抗試合では、胸のすくような3ランを放ち、MVPに輝いた。ドームまでの足はもっぱら愛車のベンツだが、それ以外では名タクをご指名いただいているとのことで――。

バッターボックスは自分の世界

 村手 今年のドラゴンズ、残念でしたねー。夏すぎまでは優勝を期待して見ていたんですけど。やってらっしゃるご本人としては、いかがでしたか。

 山崎 僕自身は、前半戦がちょっと悪すぎたなと思っています。それが響いて優勝できなかったので、僕自身もファンの方も、納得いかないだろうと。後半戦は僕なりに頑張ったんですけど、及ばなくて……。

 村手 一年間ずっと好調を保つというのも、大変なことなんでしょうね。

 山崎 でもいいときは、だれだって打ちますからね。それをどれだけ長く続けられるかというのが、一流選手で。横浜には負けるべくして負けたと思いますね。

 村手 自分が「ここで打ちたい」というときに、バントの指示が出るというようなことはあるんですか。

 山崎 大体ゲームの流れで、自分の役割というのが分かりますからね。「ここでバントだな」と予想してサークルにいますから、意外とスンナリ入っていけるんです。僕は幸い、今年はなかったんですけどね。

 村手 あ、そうでしたか。

 山崎 でも自分に自信のあるときは、「何!?」という、悔しい気持ちはありますね。頭にきてヘルメットを叩きつけたいときもありますけど、あくまでも団体スポーツですから。一人でやるのは、バッターボックスに立って、自由に打つときだけ。それは自分の世界ですね。

 村手 そうですか。ナゴヤドームは、初めの年よりは慣れましたか?

 山崎 ええ、違和感はなくなりました。1年目は、全くよその球場でやっているみたいでしたからね。ドーム元年は、ほとんどどこの球団もダメですよね。

 村手 やっぱり広くなると、飛ばそうと思って?

 山崎 力んじゃいますね、ええ。力まないようにしようと、思ってはいるんですけど。守備面なんかでは、ドームの方が断然やりやすいんですけどね。

若いときは運転手さんと大ゲンカしたことも

 村手 名古屋で試合のあるときなどは、タクシーでドームにいらっしゃるんですか。

 山崎 いや、球場には自分の車で行きます。でも遠征のときに駅まで行ったり、夜ちょっと錦三で飲んだりするときは、もっぱらタクシーですね。僕は基本的には、名タクさんしか乗らないです。チケットも作ってますし。嫁さんやお袋もよく使うもんですからね。東京に行っても、チケットが4社で使えますから、それでまかなって。

 村手 それはありがとうございます。

 山崎 正直なところ、他のタクシーは結構、うるさいんですよ。いろいろ野球のこと聞いたりね。マナーも悪いし、メチャクチャ飛ばす人もいますしね。僕は若いころ、他社のタクシーの運転手と、3回ケンカしたことがあるんです。乗った瞬間に「どこ行く!」言われて、「コノヤロー、お前は何様じゃ!」と大ゲンカ。(笑い)

 村手 遠征などであちこちお出かけになると、他の都市のタクシーにもお乗りになるわけですね。

 山崎 乗ります。どちらかというと名古屋や東京、大阪といった大都会の運転手さんは、比較的しゃべらないですね。田舎に行くと、よォしゃべりますよ。この前も東西対抗で宮崎に行ったとき、タクシーに乗ったんですけど、いろいろ説明してくれました。「ここはああで、こうで」と。僕はそういうのがすごい好きだから、「ふうん」と思ったりして。

 村手 海外ではいかがですか。

 山崎 怖いですね、さすがに。特にアメリカ。映画やテレビの見すぎかもしれませんけど、どこに連れてかれるか、分からない。言葉が普通に通わないというのは、よくないですね。だから一人では乗らないようにしてます。野球選手何人かで乗れば、怖くないだろうと。(笑い)

少年野球時代は、大してうまくなかったです

 村手 野球は小さいころから、やっておられたんですか。

 山崎 小学校2年からです。団地のなかの運動場で少年野球があって、オヤジが「やってみろ」という感じで。でも僕は練習が嫌で、ずっと出なかったんです。で、すぐ家買って引っ越しして、そこでまた少年野球に入って。でも大してうまくもなかったし、6年でやっとレギュラーになったくらいですから。ずば抜けた子はいっぱいいましたよ、そりゃ。

 村手 ほおお。それは意外ですねー。

 山崎 中学野球のときも、ホームラン一本も打ったことなかったし。愛工大名電に入ってからも、2年くらいになって、ようやくゲームにちょこちょこ出してもらって。遠投力は負けない自信があったんですけど、野球技術はまだまだ、全然ダメだったですね。

 村手 すると「プロでいけそう」と思われたのは、いつごろ……。

 山崎 そんなのありませんよ(笑い)。僕は小中学校時代ずっと、競輪選手になりたいと思っていたんです。まさかプロ野球に入るとは。

 村手 ということは、プロ入りは、スカウトで?

 山崎 ええ、ドラフトで指名がかかりましたから。で、実は巨人に入りたかったんですよ(笑い)。巨人のスカウトの人も、いい条件で取ってくれるという話だったんです。でもフタを開けてみたら、「取らないな、ウソこかれたな」。そう思った矢先に中日がドラフト2位で指名してくれたんで。その件もありますからね。やっぱり巨人戦が一番、燃えますね。(笑い)

息子はタクシー運転手になるかも?

 村手 沖縄キャンプを終わったと思うと、アッという間にまた次の準備ですね。

 山崎 ホント、すぐですよ。12月の半ばすぎると、気が重くなってきますよ。「また始まるな」と。(笑い)

 村手 お休みの予定は何かあるんですか。

 山崎 うん、せっかくのオフですから、嫁さんと息子を連れて、一週間くらい旅行に行こうかなと思っているんですけどね。

 村手 お子さんは今、おいくつでいらっしゃるんですか。

 山崎 2歳3カ月です、はい。

 村手 将来は野球選手にしようと?

 山崎 いやァ、今は「トラックの運転手になる」って言ってますよ。車が大好きですから。タクシーの運転手になるかもしれない。(笑い)

 村手 その節はぜひ当社においでいただいて(笑い)。今日はお忙しいところ、ありがとうございました。来シーズンのご活躍を楽しみにしています。