この記事は1998年12月のものです。現在の内容と異なる場合がありますのでご了承ください。

とらばーゆ人

心温まる言葉で人間くさい会話を

櫻井博志さん(南部第2営業基地)

 

 人を安心させる柔らかな物腰と風貌。それでいて取材にはよどみなく的確に答えてくれる櫻井博志さん、45歳。名タクに入社して丸4年という中堅の営業係(乗務員)です。胸のネームプレートについた肩書きは営業主任。「3年以上の実績とある程度の成績があれば、誰でもなれるんですよ(笑)」。

 簡単に言ってのけますが、やはり努力家なのでしょう。かつては外資系大手ハンバーガー企業でスーパーパイザーの地位まで上った人。スーパーパイザーといえば、担当地区に何十とある店舗の総括
管理者です。新幹線を使ってあちこちの店舗を移動し、品質、売上、サービス、あらゆることを管理指導します。

 最近でこそ日本でも成績主義とか能力主義という言葉が聞かれるようになりましたが、外資系企業では以前からそれが当たり前。実績が上がれば、それに応じた身分が保証されます。櫻井さんにとっては「やりがいのある好きな会社だった」そうです。ただ外資系とはいえ、舞台は日本。日本の商習慣であるゴルフ・洒の接待もあります。コンピュータには休日が表示されていても、実際はほとんど休みなし。それでとうとう体を壊して退職してしまいます。

 名タクへの転職は、新聞の求人欄を開いた時、真っ先に名タクの広告が目に入ったから。「きっかけは至って単純ですが、そこに自由を感じたんですね」。元の職場は、あの「いらっしやいませ」に始まるマニュアル化された会話が中心。こうして取材を受ける時もマニュアル化された表現があるのだそうです。

 ところが今は、マニュアル化された接客ではなく、自分の言葉で自由に話せるうえ、心温まる気遣いと会話で感動を与えることもできます。そんな「人間くささが一番いいですね。今は朝起きたときから、自由だという解放感があるんです(笑い)」。不況といわれる今だって、「真面目にコツコツとやっていれば、それなりの成績も上がります」。

 そういう櫻井さんは、これまで事故なし。お客さまからのクレームなし。ただ時々「ご乗車ありがとうございます」というつもりが、「いらっしやいませ」になってしまうこともあるとか。でもそれもご愛きょうですよね。