この記事は1999年12月のものです。現在の内容と異なる場合がありますのでご了承ください。

 

東西タクシー事情  

ITSセントラルツアーズ
マネージャー
加藤 政則さん

 

【シンガポール】

高価なマイカーは夢の夢、

庶民の足はやっぱりタクシー

 シンガポールの面積は淡路島ほど。この小さな島を訪れる観光客は年間600万人。名にし負う観光大国だけに、タクシーは大活躍というわけです。

 とはいえその活躍ぶりは日本とはちょいと違いますから、初心者は面食らうかも。まずシンガポール独特の「中央商業地区乗り入れ制度」から説明しましょうか。国土が狭いだけに繁華街のオーチャードやマリーナ周辺は渋滞が一際すごい。そこで政府が車両規制を実施していて、そうした地区へ乗り入れたいなら特別料金を徴収されるんです。それも朝夕のラッシュ時は割高で3S$(シンガポールドル)、日中なら1S$という具合(ただし週末や祝日は無料)。

 それでも運賃は日本と同じメーター料金制で、初乗りが2・4S$(約150円)、あとは200bごとに0・10S$。この点はだから安心してください。ですが本当にこの点だけ。というのは、この国のタクシー料金はシートに座っていた距離や時間だけで決定されるわけじゃないからです。あなたがチャンギー空港に降り立ちます。そのままオーチャードへ直行なら、先ほどの乗り入れ制度の特別料金が加算されるし、トランクに大荷物を押し込めば、さらに別途料金が、また時間帯や乗車場所によってもさまざまな追加料金が待ち構えているんですね。ややこしいこと、この上なし。おまけに全部の項目料金を把握してるお客はそんなにいるとは思えません。どうしても余分に支払うハメに陥るのもやむなしというべきでしょう。

 あ、もう一つ安心材料がありました。タクシーの車種はコロナやクラウンなど日本車がほとんど。何せ暑い国ですから、年中エアコンを酷使します。そこで品質に定評のある日本車が重宝されるわけですね。

 ところでシンガポールの車の値段たるや、べらぼうで、たとえばカローラ1台が約800万円! だから料金の安いタクシーは観光客だけじゃなく庶民の足にもなっているんです。ドアが自動開閉じゃなくたって、行き先が遠いと運転手に文句を言われたって、道をしょっちゅう間違えられたって、あるいは乗車拒否が日常茶飯事だって、それでもタクシー乗り場は行列です。まあ、狭い国ですから、のんびり構えて運転手とのおしゃべりを楽しんでください。もし法外な料金を請求されたら、会社に言うゾと脅せばOK。たちまち正式な料金を提示してくれますから。