この記事は2000年6月のものです。現在の内容と異なる場合がありますのでご了承ください。

名タク招待席

 

課長補佐2

業績トップの補佐コンビ、その秘密

 中日ドラゴンズ、調子いいですね。4月の低迷が嘘のよう。熱烈ドラファンの私としては、ドラゴンズが勝った翌日の朝ご飯はおいしいし、仕事に向かう足取りも軽い。乗務員もきっと同じです。

 タクシーにお乗りになったとき、やけに弾んだ乗務員がいたら、そして前日の試合でドラゴンズが勝っていたら、ドラファンかもしれません。

 二人の名タクマンがいます。桑山敏雄(55)、鬼頭英生(56)。二人とも南部第一基地1課の課長補佐として、一日交替で乗務員を指導しています。2人がコンビを組むようになって約2年。以来、1課の営業成績は全基地のなかで、ほとんど毎月、ナンバーワンを誇っています。

 営業成績を上げるのはもちろん乗務員の働きいかん。でも乗務員を“やる気”にさせる管理者としての、二人の役割も見逃せません。野球でいえば監督と選手の間にいて、選手を直接指導するコーチのような存在でしょうか。

 選手も乗務員も、およそ人間は十人十色。考え方や性格も違えば、どういうきっかけで“やる気”になるかも違います。そのきっかけ探しは、「とことん相手とコミュニケーションを深め、人間性を把握すること」と二人。いわば定石ですが、これが案外、難しいものです。

 「交番表」というタクシー会社独特の資料があります。誰が何時にどの車に乗って出庫したか、入庫したか。どれだけ走ったか、健康状態は・・・・。毎日の車と人の全部の動きが一目で分かる貴重なデータです。これを記入しながら、車と人を配置するのは課長補佐の仕事。めくれば乗務員の働きぶりはもちろん、性格や癖まであるていど把握することができます。

 1課に在籍するのは乗務員181人、車が77台。桑山、鬼頭の強みは、その全部のデータをほとんど頭に入れていることでしょう。さらに家庭状況や友人関係まで目を配らせ、そこから業績を上げるきっかけ探しを始めるのです。


南1基地1課の桑山(左)・鬼頭(右)課長補佐

 細やかな心配りも二人の特長です。

 「まず朝、乗務員が気持ち良く出ていけること。帰ってきたら、成績にかかわらず『次は頑張ろう』という気にさせること」これが一番大事、と鬼頭。

 「乗務員のためにどれだけ動いてあげられるか。『今日の担当車両が見当たらない』と言ったら、『あそこにあるだろう』じゃなく、見に行ってあげるとか」と桑山。「ちょっとした思いやりで、気持ちは通うものですから」

 共通するのは、だれでも状況が与えられればやる気になるはず、業績があげられるはず、という人間への厚い信頼感でしょう。

今日の名タクの運転手は、とても対応がよかった。もしお客さまがそうお感じになったら、桑山、鬼頭の働きによるものかもしれません。運転手がドラファンで、ドラゴンズが勝った翌日でもない限り‥‥。