この記事は2000年6月のものです。現在の内容と異なる場合がありますのでご了承ください。

 

バックミラー

健康とコミュニケーションの特効薬は?!

京谷 孝範(西営業基地)

 当社の車は、助手席シートの背にドライバーの自己紹介板を掲げている。氏名のほかに趣味が記されていて、それをきっかけにお客様と話が弾めば、というサービスの一環だ。
 その趣味欄に楽器演奏と書いた。子供のころから音楽や芸事が大好きなのである。デビューはハーモニカ。独学でマスターし、小学校の卒業式で独りで吹奏した。
 中学時代には兄の影響でマンドリンを始めた。これは熱中したといっていい。十八のときには地元のマンドリンオーケストラに加わり、もっぱら演奏活動に血道を上げた。民謡から外国曲まで、今でも500曲は弾くことができる。
 まだある。歌手養成の音楽教室を手伝ったころにはドラムを修得し、ジャズ楽団に。さらに一宮市の伝統芸能「住吉踊り保存会」に加わり、歌舞伎芝居の女形も演じている。夏は夏で、各地の盆踊りの大太鼓も。

 楽器も踊りも好きには違いないが、それより、多くの人を盛り上げるのが好きなのである。今も老人ホームなどへ慰問に行き、喝采を浴びると、よし今度もと、ますます芸の習熟に熱を入れることになる。
 タクシーのお客様にも芸能好きな方が多い。歌舞伎見物帰りのお客様に、その日の出し物の名場面を演じてみせ、多いに受けたこともあった。助手席の背のくだんの紹介欄を見たお客様に、ぜひにと誘われ、カラオケボックスで喉を披露したこともある。あるお客様からは立て続けに演歌をリクエストされて、近隣の駅までのはずが、結局郊外の所用地までお乗りいただいたこともあった。
 年配の方ばかりではない。若いお客様ともロックやジャズで話が弾むのである。音楽は言葉以上に有効なコミュニケーションの手段だと、つくづく思う。 ボランティアで続けている各施設の慰問コンサートでも、涙ぐんで拍手をしてくださるお年寄りがいっぱいいる。そんなとき、長い時間話し合って、心がすっかり打ち解けたときと同じような喜びを感じるのである。  素人芸の自分の趣味も、まんざら捨てたものじゃない。仕事も生活も少なからず膨らませてくれるのだから。それに趣味に没頭してるとストレスが溜まらない。マンドリンや踊りは健康の特効薬といってもいい。