この記事は2002年3月のものです。現在の内容と異なる場合がありますのでご了承ください。

菱形つれづれ

「情報の裏目」

名鉄交通取締役相談役
村手光彦

 流し営業では、ドライバーの努力が業績のカギを握ります。お客さまのおられるところはどこか。それをコツコツと根気よく探すわけです。

 しかし同じように流しても、業績に優劣が出ます。これは運のよさかというと、そうでもありません。優秀なドライバーはほとんど毎回、いい成績を上げるのです。お客さまがおられそうなところを熟知していることもあるでしょう。あるいは風を読む力があるのかもしれません。

 もう30年以上も前、初めてコンピュータが導入されたころ、どの地域にお客さまが多いのか、分析を試みたことがありました。名古屋市内を100m単位に細分化し、全ドライバーが何時に、どこからお客さまをお乗せしたかというデータを集積し、コンピュータで整理したのです。

 データは数10万件におよび、曜日、時間帯を指定すれば、どの地域にお客さまが多いかが、一目で分るようになりました。これは貴重な情報だとうぬぼれていましたが、よくよく考えると、これをどのような形で皆に伝え、利用させるかが大問題でした。 いくらお客さまが多いといっても、名タク1000台のタクシーが一度に殺到したら、大混乱します。ではどのドライバーにどう情報を伝えるのが公平なのか。結局、いい方法を見出すことができないまま、この情報は引き出しにしまわれました。

 最近のIT技術の発達により、だれでもすばやく必要な情報が取り出せるようになったのはうれしいことです。けれども情報は扱い方によっては、思わぬ方向へ行くこともあります。できるだけ多数の人がメリットを受けられる情報を待望しています。