この記事は2000年3月のものです。現在の内容と異なる場合がありますのでご了承ください。
名タクの営業係(乗務員)歴1年半の伊藤典明さん(48)は、元進学塾の塾長さんです。国立大学を卒業後、設計事務所に勤務しながらアルバイトで塾講師を勤め、2年後には自分の塾を開きます。以来20年あまり、塾長自ら教壇に立ち、子供たちの指導にあたってきました。 「根っからの子供好きなんですね。塾に来るのが楽しいといわれるとうれしくて。実際、塾のない日でも勉強と称して、子供たちがよく来ていました」と、当時を懐かしむ伊藤さん。 豪放でおおらかな人柄を全面に押し出し、自分のキャラクターで子供たちを引きつける兄貴分的な先生でもあったようです。 最盛期には名古屋市内に3つの教室を持ち、生徒数も300人を超える大所帯でした。その塾の経営が思わしくなくなり始めたのは、やはり不景気のどん底という言葉が使われ始めた数年前。かつては小学1年、2年あたりから塾に通う子供が多かったのが、次第に高学年からしか入塾しなくなり、それに加えて少子化、大手進学塾の進出も強烈な逆風になりました。 「しかし、そればかりではなく、塾を大きくしすぎて、自分の目が行き届かなくなったことも、原因の一つだったと思います」と伊藤さん。 閉塾を決意し、新しい道を探し始めた時、一番心にとめたのは、やはり家族のことでした。 「妻も子供もいますから、福利厚生のしっかりした大企業を選ぼうと思いました」。そのメガネにかなったのが、今の名タクです。 「名タクは社員教育が厳しいという評判ですが、それはプロとして当たり前。それよりも年に2回も健康診断があり、何かあれば名鉄病院と連携してケアしてくれるなど、社員の健康を第一に考えてくれる企業姿勢が気に入ってます」 仕事のない異様はガラリと変わりましたが、昔と変わらないのは趣味の海外旅行。とくにアジアが好きで、現在は奥様と中国語のレッスンにも通っているとか。 北部営業基地勤務という場所柄、空港への送迎も多く、「お客さまと海外旅行の話題で盛り上がることもしばしばです」という伊藤さん。塾の再建という大きな目標を胸に秘めながら、今は仕事に趣味に生き生きとした日々を送っているようです。 |